マインドフルネスの話

青年期のうつとゲーム障害を緩和するマインドフルネス

テクノロジーの急激な進化は、私たちに便利で快適な生活をもたらしてくれましたが、同時に、ネガティブな現象も引き起こしていることは、否定できません。

なかでも、「デジタルネイティブ世代」たちへの影響については、昨今、様々な形で問題が噴出するようになりました。インターネットサービスが普及し始めた1990年代以降に生まれた同世代は、スマホやパソコンを難なく駆使する一方で、それらに依存し過ぎてしまうことが、大きな問題になっています。

1日の大半をスマートフォンの操作に費やす「スマホ中毒」や、オンラインゲームの世界に浸りきってしまう「ゲーム障害」に陥る若者たちが、今、世界中で爆発的に増加しています。

彼らはその傾向を強めると同時に、メンタルヘルスも悪化させていくことが指摘されています。スマホやゲームがやめられない。時間管理ができず、体調不良になったり、注意されると“切れる”ようになる。中にはひきこもりへと移行していく若者も少なくありません。

こうした青少年の「ゲーム障害」に対して、マインドフルネスが改善の糸口になることが、昨今の研究で明らかになりました。

中国の研究チームが行った研究では、12歳から19歳までの580人の参加者に、うつ状態やインターネットゲーム障害、不適応的認知(思い込みや過度の期待をする傾向)、マインドフルネスレベルを計るテストを実施。

その結果、マインドフルネスレベルが高いほど、うつ、ゲーム障害、不適応的認知が低い傾向があることが分かりました。
つまり、ゲーム障害やそこから派生するメンタルへのネガティブな影響に対して、マインドフルネスが緩衝材になっている可能性が示唆されたのです。

マインドフルネスとは、今の瞬間に注意を向け、評価や判断を手放す状態。そして、気づきの状態(アウェアネス)に自らを置くことができるようになります。

ゲームやスマホに過度に溺れている自分に気が付くことができれば、おのずとそこから抜け出ることもできるようになるはずです。
青少年のみならず大人たちもまた、インターネットに振り回されないようにするために、マインドフルネスのレベルを高めていきましょう。

参考:https://www.mdpi.com/1660-4601/20/4/3633

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医