マインドフルネスの話

月経前症候群を緩和するマインドフルネス

月経開始予定日の通日前になると、イライラする、攻撃的になるといった精神的に不安定な状態になることは、「月経前症候群」と呼ばれます。さらに手足の冷えや肩こり、乳房の痛みなどの身体的症状が出るケースも少なくなりません。

内閣府が行った調査(「男女共同参画白書」平成30年版)によれば、月経前症候群を持つ女性は20代で28.6%、30代で24.2%と、およそ3割弱であることがわかりました。毎月の不調を抱えながら、仕事や家庭での役割をなんとかこなしているということでしょう。

「不調だけれども病気ともいいきれない」といった社会的な理解の前に、病院にも薬にも頼らず、ただだまって耐えている女性が多いのが現状です。

そうした月経前症候群に悩む女性を、マインドフルネスがサポートできるかもしれない。そんな可能性を示唆する研究が昨今、発表されました。

北海道医療大学が行った研究では、平均年齢19.4歳の女子大学生286名を対象に、「月経に対してどのように考えているか(月経観)」「注意と気づきを測定する尺度(マインドフルネスレベル)」を調査、分析が行われました。

その結果、月経に対してネガティブであるほどPMSを有する傾向が高くなり、さらに、「月経はやっかいなもの」ととらえる傾向が強いほど身体症状を有する傾向も高くなることが分かったのです。その一方で、マインドフルネス特性が高い人ほど、PMSを有さない傾向があることも分かりました。

研究者は「思考や感情に対して評価をしない態度をとることで、他者に怒りをぶつけたり、対人関係に支障が出るような態度を示すことを軽減できる可能性が示唆された」と語っています。

「思考や感情に対して評価をしない態度」とは、「自分や他人の考えや気持ちに対して善悪や可否といった判断をせず、ただ見つめる」ということです。その状態に導いてくれるのが、マインドフルネスの呼吸瞑想です。月経前に気分が不安定になっているときには、静かに座って呼吸瞑想をしてみてください。不安定になっている自分にまずは気づき、それをただありのままに見つめる。それが、PMSを軽減して女性のQOLを高めるサポートになるはずです。

参考:https://hsuh.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=10538&item_no=1&page_id=13&block_id=17

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医