マインドフルネスの話

高血圧の不安と身体症状を緩和するマインドフルネス

健康診断で血圧に黄色信号、赤信号が灯り、医師から注意を受けたり、健診結果が「要再検査」になった――そんな経験がある人は少なくないでしょう。

厚生労働省が行う「国民健康・栄養調査」によれば、高血圧疾患の推計有病者数は約4300万人と、実に日本人の3人に1人という結果です。年齢が高くなるほどその確率は高くなるため、中高年になれば、高血圧の薬を服用している人は珍しくありません。まさに、国民病ともいえるのが、高血圧です。

高血圧は心血管疾患との関りが深く、コントロールが悪ければ重篤な状態にもなる可能性もあることから、患者にとっては常に不安がつきまとうもの。特に重篤な症状がなくても、急な血圧の上昇やめまい、頭痛、胸の圧迫感など、身体症状があればより不安は募ります。

そんな高血圧患者が抱える不安や症状を、マインドフルネスが緩和する。そんな研究結果が昨今、発表されました。

中国・大連医科大学が行った研究では、109人の高血圧疾患をもつ中高年女性患者を対象に、39の質問で構成された質問票を使用してマインドフルネスレベルを測定すると同時に、うつ病スケールによる不安の測定、自己評価スケールによる身体症状を評価しました。

それらのデータを分析した結果、マインドフルネスレベルが高いほど、不安や身体症状が緩和する傾向があることが確認されました。

研究では「患者がポジティブな感情を高め、不安を軽減、身体症状を改善する可能性がある」と結論づけています。

「心と体は一つ」とはよく言われる言葉ですが、特に血圧については精神状態が大きく影響するものです。そのため、マインドフルネスレベルを高めることが精神的な安定をもたらし、血圧を落ち着かせることにつながるというのは、十分に考えられることです。

血圧に黄色信号が灯ったときには、静かにマインドフルネス瞑想を行う。そんな生活習慣が、高血圧の不安や症状を緩和させることにつながるでしょう。

参考:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jch.14670

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医