マインドフルネスの話

パートナーとの関係を良好にするマインドフルネス

マインドフルネスの実践は、ストレスや心理的な負担感を軽減したり、集中力や注意力を向上させるといった効果があることが、これまでに様々な研究で明らかにされてきました。では、こうした個人へ与える影響ではなく、夫婦や恋人同士といったカップルに対しては、どんな影響があるのでしょうか。

それを明らかにしたのが、ドイツ・ハイデルベルク大学の研究チームでした。

研究チームは、カップルなど2者の関係に対してマインドフルネス介入をした16の研究論文の分析を実施しました。各論文はオランダ、台湾、カナダ、アメリカなど様々な国で行われた研究をまとめたもので、合計で1466人が対象となっていました。カップルは夫婦のほか、同棲している恋人同士や親しい友人などが含まれており、サンプル内の37.1%が恋愛関係にありました。

その結果、マインドフルネストレーニングを実施することは、2者の幸福感や生活の質を向上させることが確認されたのです。同時に、精神的なストレス対策としても有益であることも分かりました。

あるカップルにおけるマインドフルネス介入の研究では、二人で互いの手を取り合い、そのまま1分間、お互いの手に意識を集中するというトレーニングがありました。日本人にとってはなかなか照れくさい行動ではありますが、長年連れ添った夫婦ともなれば、互いの存在に意識を集中することは希薄になってしまいがちでしょう。ときにはこうした時間をとることで、お互いへのリスペクトや感謝を新たにするきっかけになるかもしれません。

参考:https://onlinelibrary-wiley-com.translate.goog/doi/10.1111/famp.12683?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医