マインドフルネスの話

呼吸が「見える」ボールで呼吸瞑想の効果が高まる

「呼吸瞑想をやっても、どうもうまく集中できない...」。

そんな悩みをよく耳にします。自分の呼吸に意識を集中してくださいといわれても、その感覚がよく分からなかったり、すぐにいろいろな考えが頭に浮かんでしまって、瞑想がうまくできないという人は少なくありません。私はいつも、そんな悩みを相談されたときには「気が散っても問題ありません」「違うことを考えていたことに気付き、気付いた自分を褒め、そして呼吸に意識を戻してください」とお伝えしています。

それでも「瞑想をやった実感が持てない…」という人に向けて「呼吸を可視化するデバイス」が昨今、開発されたことが発表されました。開発したのは、イギリスのバース大学の学生、アレクズ・ファラル氏。彼が開発したのは、「バイオフィードバック(人間の生体機能をリアルタイムに観察する手法)」を応用した、ユーザーの呼吸に合わせて膨らんだり、縮んだりするボールです。呼吸を目に見え、手に触れられる形にすることで、呼吸への集中力が維持されやすくなるという意図で開発されました。

実際に、ボールを使用することで、呼吸に集中する能力が大幅に向上し、ボールを使用しない瞑想では不安感の減少が31%だったのに対し、ボールを使用した瞑想では75%減少することが確認されました。

ボールは体験者の体に取り付けたセンサーがコンピューターを介して呼吸パターンをフィードバックすることで、機能するという仕組みになっているそう。商品化は未定ですが、呼吸瞑想のサポートに大いに役立ちそうです。

参考:https://dl.acm.org/doi/10.1145/3544548.3581188

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医