マインドフルネスの話

ストレスによる免疫低下を軽減するマインドフルネス

ストレスは適度なレベルであれば、モチベーションや心身の働きを高めるといったメリットがありますが、それが過度であったり、慢性的になってしまうと、心身にダメージを与えるもの。身体的には免疫低下や血圧上昇、胃腸の不調や不眠症。精神的には不安障害やうつ病の引き金になることも。最近では、肥満や認知症とも関連することがわかってきました。

こういった悪影響を避けるため必要なのが「コーピング・スキル」という、ストレスを管理するための対処法です。コーピング・スキルは、ストレス過多な現代社会において必要不可欠と言っても過言ではありません。

とはいえ、過度な飲酒や過食、喫煙、ギャンブルなどのコーピングは、心身や経済的ダメージとのトレードオフになってしまうため、健全なストレス解消方法とはいいがたいところ。適度な運動や十分な睡眠、健康的な食生活や好ましい人とのコミュニケーションといった、健全なコーピングを身につけることが大切です。

そして、もう一つの理想的かつ効果的なコーピング手法として、マインドフルネス瞑想が挙げられます。実際に、アメリカのカーネギーメロン大学が行った研究によれば、マインドフルネスの呼吸瞑想を行うことで、ストレスによる細胞の炎症を促進する反応を減少させることが確認されました。

研究では、顧客サービス業に従事している、ストレスレベルの高い100人の従業員に30日間のマインドフルネス瞑想のトレーニングプログラムを実施してもらい、その前後で血中の炎症誘発遺伝子発現(炎症の活性化に関わる遺伝子)レベルの分析が行われました。結果、トレーニング後は、ストレスによる炎症反応が優位に低下することが確認されたのです。

これまでに、マインドフルネスはうつや不安といった精神的な症状に対して効果があることは既に明らかにされてきました。そして今回の研究によって、ストレスによる身体的な影響をも低減させる効果があることが、新たに示されたということです。

頭痛や腰痛、皮膚炎、高血圧や胃腸の不調など、ストレスの現れ方は人によってさまざまで、これらはストレスが引き金になっていることに気が付いていない人も少なくありません。

毎日のマインドフルネス習慣が、こうしたストレス症状から自分を守ることにつながります。先の研究で実施された瞑想トレーニングは特別難しいものではなく、スマホアプリの音声ガイダンスに従って、毎日10~20分間行うというものでした。毎日の就寝前のリラックスタイムに、ぜひ取り入れていきましょう。

参考:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0889159122000964

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医