マインドフルネスの話

トラブルに遭遇したときのマインドフルネス

あるとき突然クレームが飛び込んできたり、重要な発注にミスがあったことが発覚したり…仕事をしていれば、誰もが想定外のトラブルに見舞われたことがあることでしょう。嵐の最中、冷静に正しい判断を下せるはずもなく、混乱した精神状態のままに判断、対応することで、さらに状況を悪くしてしまった…ということもよくあることです。

それも無理のないことで、人は不安や怒りといった感情に襲われた時は、高度な働きを担う脳の働きがストップし、冷静な思考ができなくなるからです。その状態で対応をすると、信じられないような間違いをしてしまうことも。

トラブルの時に一番にやるべきは、冷静な判断力を取り戻すために心と体をクールダウンすること。そのためには、問題を一度おいておき、マインドフルネスの呼吸法を行うことが効果的です。

「パニックの中で瞑想なんて、そんなのんきなことできるわけない!」と思うかもしれませんが、10分も20分もかかることではありません。一度デスクを離れて、トイレや休憩室など一人静かに過ごせる空間へ行き、2,3分の瞑想を行うだけで十分です。

まずは静かに目を閉じて、自分の呼吸だけに集中します。続けるうちに少しずつ不安や焦りが収まってくるので、そのタイミングで、始めてトラブルになった問題について見つめなおしてみましょう。このとき、問題の渦中にいる自分ではなく、外側にもう一人の自分がいると仮定して、客観的に見ることが重要です。

すると、渦中にいたときには気が付かなかったポイントや解決法が見えてきます。また、よい相談者がいることに思い至ることもあるでしょう。

いずれにしても、パニック状態のままでトラブル対応をすることは、問題に火を注ぐことになります。まずは呼吸法で心身をクールダウンし、その上で対応を模索することをお勧めします。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医