マインドフルネスの話

マインドフルなSNSとの付き合い方

FacebookやTwitter、Instagramなど、SNSを日常的に楽しんでいる方は多いことでしょう。ひとつの楽しみ程度であれば問題はありませんが、昨今は、怒りや不満をぶつけたり、自分と違う意見の人を攻撃するためのツールになってしまっている人も少なくありません。実際に、SNS上の争いがエスカレートして、裁判などのトラブルになる事例も増えてきました。

本来、社会的な動物である人間は、瞬間的に沸き上がった感情をそのままむき出しで表現することはなく、一度自分の「思考」のフィルターに通して、社会的に問題のない形で修飾したり、オブラートに包んだ言動で表現します。時には、感情を表に出すことなく、押し殺すこともあるでしょう。だからこそ、多人数のコミュニティのなかで生きていけるわけです。

ところが、自分や他人の正体がわからない環境であるSNSになると、社会的に阻害される心配もないため、言いたい放題、やりたい放題になってしまう人が一定数存在します。

他者をSNSで執拗に攻撃する人は、反射的に感情をぶつけ続けることが徐々にクセになってしまい、今度は実社会のなかでも思考を通さないままに感情をぶつけてしまうようになる可能性があります。そこまではしないにしろ、逆に実社会で自らを抑圧することに耐えかねて引き凝ってしまう可能性も指摘されています。

本来、人間は多面的なもので、一見穏やかな人のなかに激しい怒りが潜んでいたり、明るくほがらかな人の中に寂しさが隠れているものです。一人の人間の中に、様々な感情が統合され、通常のコミュニケーションが可能な状態に保たれてこそ、社会性のある大人といえるわけです。

SNSでついつい、怒りや不満をぶつけたり、他者を攻撃しそうになったときには、一度、「メタ認知」の視点を持つことをおすすめします。

メタ認知とは「客観的なもう一人の自己」の視点を持って、自分を客観的にありのままに見つめることです。自分はSNSを通して他者をなぜ攻撃するのか? なぜ怒りを感じるのか? 何に不満があるのか? その感情を表すことで自分はどうなるのか? 一度すべて俯瞰して、自分自身の姿を見つめなおしてみましょう。

すると、自分が本当は何に対して怒りを抱いているのか、何に対して不満をもっているのかが見えてくることでしょう。それに気が付いたとき、本当にやるべき行動や必要な言葉、慎むべき言動に気が付くこともよくあります。
SNSのなかで自分を見失いそうになったときの習慣として、取り入れてみてください。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医