マインドフルネスの話

介護する人の心と体を癒すマインドフルネス

少子高齢化がますます加速するなかで、徐々に表面化してきたのが、認知症患者を介護している家族たちの健康問題。一昔前であれば、肉親が数人で力を合わせて乗り越えていた介護も、いまや単身の子どもがたったひとりで担うケースも珍しいことではなくなりました。

こうなると、肉体的にも、精神的にも追い込まれてしまいます。仕事や子育てとの両立が難しくなって、心身ともに病んでしまい、認知症の親と共倒れになってしまう……といったケースも増加しており、最近では「介護うつ」ともいわれ、社会問題化しつつあるようです。

認知症患者だけでなく、その介護者も共にケアする必要がある。そんな視点からオランダのマーストリヒト大学で行われたのが、認知症患者とそのパートナーに対するマインドフルネスの影響を調べた研究です。

初期段階の認知症患者とそのパートナーである7組の夫婦を対象に、8週間のマインドフルネストレーニングが実施され、その前後の生活の質とストレスレベルの変化が調べられました。

結果、参加者全員が落ち着きとリラックス感の増加が得られたほか、介護者のマインドフルネスレベルが大幅に上昇したことが分かりました。生活の質に関しても、わずかながらポジティブな影響があることが確認されたとのことです。

介護は心身共に負担の高い仕事であるうえ、終わりが見えないという精神的なプレッシャーもかなりあるもの。認知症患者が増加するということは、その介護者もまた、増えるということ。超高齢化社会に突入する日本では、今後、介護者のメンタルケアは大きな課題となるでしょう。

要介護者と介護する人が同時にメンタルケアができる良策として、生活のなかにマインドフルネスを取り入れてほしいと思います。

参考:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnagi.2019.00092/full

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医