マインドフルネスの話

怒りがわかない心をつくるマインドフルネス

ちょっとしたことで頭に血が上り怒鳴ってしまったり、相手をひどく攻めてしまって後から後悔する…といったことは、だれもが経験したことがあるでしょう。怒りの感情は、それをぶつけられる方もそうですが、ぶつける方の心にも大きなダメージを与えるものです。

怒りの感情をうまくコントロールする「アンガーマネジメント」という心理的な手法が一時期、注目されましたが、多くの方が怒りの感情との付き合い方について悩んでいることが分かります。

マインドフルネスでは、「そもそも怒りがわかない穏やかな心を育む」ことが大切であると考えます。しかし、いきなり瞑想をしようとしても心が波立った状態では難しいものです。そこでまずは、怒りや不安などのネガティブな感情を穏やかに整えることが重要。そのために役立つのが「三段階分析法」です。

まず、怒りの感情が沸き上がったとき、一段階目として、「思考」に注意を向け、自分はどのような考えから怒りを抱いたのかを探ります。例えば、会社の同僚が急ぎで頼んだ仕事にまったく手を付けていなかったとき、「最優先でやってくれると自分は信じていた。なのに後回しにされていてがっかりだ!」といったかたちで認識します。

次に第二段階として、自分がどんな感情を頂いたのかを探ります。「落胆、怒り、悲しさや悔しさ」といった具合です。

最後の第三段階としては、体の「感覚」を分析しましょう。「体がカッと熱くなって気が遠くなる…」など、様々な感覚があるでしょう。

この①思考、②感情、③感覚を自分で分析し、認識する一連の作業によって、怒りに支配されている自分を客観視できるようになります。これが、マインドフルネスでいう「メタ認知」になります。自分を客観的に、冷静に見つめるために「認知していることを認知する」作業なのです。

そこで、最後に大きく深呼吸をします。怒りの感情がピークに達しているときの時間は、実はわずか6~10秒といわれています。そのため、深呼吸でその時間をやり過ごせば、その後は自然と怒りの感情は下火になっていきます。

深呼吸したあとは、怒りで硬直していた思考が回り始めることでしょう。すると冷静さを取り戻し、視界も思考も開けていくことが実感できるはずです。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医