マインドフルネスの話

不眠症を改善するマインドフルネス

秋から春にかけては、寒暖差が激しいうえに環境が変化する人も多いため、ストレスから自律神経が乱れて心身の不調に陥るケースが増えてくる季節です。中でも多いのは、寝つきが悪くなったり、すぐに目が覚めてしまうといった、不眠の症状でしょう。

とはいえ「病院にいったり睡眠薬を服用するのはちょっと…」とためらう人は多いもの。そんなときには、まず、マインドフルネスをはじめてみるのも一案です。
マインドフルネスは医療現場ではうつの症状などに対する精神療法のひとつとして取り入れられ、抗うつ剤に匹敵する効果があるとも言われています。さらに、昨今の研究では、不眠症に対する有効性も改めて確認されたのです。

東京大学、京都大学、江戸川大学、筑波大学、国立精神・神経医療研究所の研究チームは、不眠症の認知行動療法に関する241の研究論文の分析を実施。複数の要素が組み合わされている認知行動療法のなかで、どの要素が実際に有効なのかが分析されました。
結果、睡眠制限法(横になる時間を短くして深い睡眠を誘導)、認知再構成(不眠に対するネガティブ思考を緩和)などと同様に、マインドフルネスにも有効性があることが、改めて確認されたのです。

夜、ベッドに横になったら静かに目を閉じ、自分の呼吸に意識を集中。そして、眠れない自分に対して不安や苛立ちを手放し、「ただ、そうあるだけ」と静かに受け入れて、何度でも注意を呼吸に戻します。

あるいは、寝る前に「ボディスキャン瞑想」を実践してもよいでしょう。
このマインドフルネス瞑想を毎晩の習慣にしてみてください。うまくできないときは、ガイド音声で瞑想を誘導してくれるアプリを利用するのも一案です。
この繰り返しが、健やかな睡眠を取り戻すきっかけになるはずです。

参考:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2024-01-18-0

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医