マインドフルネスの話

他人の言葉に敏感過ぎる心を守る方法

人からかけられた言葉やその人のしぐさ、表情などに対して、過度にビクビクしたり、傷ついて立ち直れなくなったり。そんなHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)と呼ばれる、敏感で繊細な人たちがいることが近年わかってきました。専門家によれば、およそ5人に1人が該当するといわれています。

それに該当しなくても、精神状態が弱っているときには、ちょっとした一言が気になって眠れなくなることもあるでしょう。

そういった方々には、ぜひ、その言葉を発した人の表情や声の調子などから感じ取れる感情を引き算して、その言葉の意味だけを拾ってみて欲しいと思います。

例えば、「この資料のデータには間違いがあるじゃないか! どうしてそんなことにも気が付かないんだ!」と上司から叱られたとします。すると、HSP傾向の高い人は、「また怒られてしまった。きっと仕事ができないダメな奴だとまた思われてしまったに違いない」と落ち込んでしまうかもしれません。

しかし、自分に向けられた言葉の意味だけを抽出すると「資料に乗せるデータは間違わないように、よく気をつけることが大事だ」ということです。そう言葉を受け取ると、自分が次はどうするべきなのかがよくわかることでしょう。

このように、相手や自分の感情に振り回されることなく、事実をありのままに見つめなおして冷静に受け止めることは、マインドフルネスの基本的な姿勢です。他者からかけられた言葉によって、自分の感情が乱れそうになった時には、感情を引き算して「相手が伝えたい本質は何か」を抜き出す作業をしてみてください。

きっと冷静さを取り戻し、必要な判断や行動がとれるようになるはずです。

川野泰周
臨済宗建長寺派「林香寺」住職、精神科医